フィクトセクシュアル
架空の対象へ性的に惹かれるというあり方。「Fセク」と略されることもあります。訳すとすれば「虚構性愛」ですが、カタカナ表記が一般的です。
具体的には、①架空の性的表現を愛好しつつも生身の人間には性的惹かれを経験しないこと、あるいは、②「性愛」 や「恋愛」として一般的に想定されるような営みを架空のキャラクターと行いたいと感じること、を表す言葉として使われています。
フィクトロマンティック
架空の対象へ恋愛的に惹かれるというあり方。「Fロマ」と略されることもあります。
二次元性愛
二次元のキャラクターや創作物に対して、生身の人間とは異なるものとして、性的に惹かれたり欲望したりするあり方。
どの性別の人にも性的に惹かれないというあり方。「無性愛」と訳されることもあります。
多様な人々を含むカテゴリーであるため、たとえばフィクトセクシュアルのなかでも生身の人間へ性的に惹かれない人が、広い意味でアセクシュアルだと自認していることがあります。
アロマンティック
どの性別の人にも恋愛的に惹かれないというあり方。こちらもアセクシュアルと同じく多様な人々を含むカテゴリーです。
エーゴセクシュアル
性的表現を愛好したり性的空想をしたりするが、自ら性交渉に参与したいとは望まないというあり方。カタカナ表記が一般的ですが、強いて訳すなら「自己無関与性愛」と訳せます。
広い意味でのアセクシュアルに含まれるラベルです。また、エーゴセクシュアル的な人のなかにも、自分の愛好するものが架空の創作物であるということを重視する人は、フィクトセクシュアルというラベルを使っていることがあります。
性的マイノリティの周縁化を説明するための用語
対人性愛(human-oriented sexuality)
生身の人間へ性的に惹かれるというあり方。性的マジョリティを名指す概念で、フィクトセクシュアルや二次元性愛の立場から草の根的に広まった用語です。
対人性愛中心主義 (human-oriented sexualism)
生身の人間へ性的に惹かれること(対人性愛)を「望ましい」「あるべき」セクシュアリティだとする規範のこと。フィクトセクシュアルや二次元性愛の立場から提起された用語です。
強制的性愛 (compulsory sexuality)
他者へ性的に惹かれることを「望ましい」「あるべき」セクシュアリティだとする規範のこと。アセクシュアルに関する運動や研究から生み出された言葉です。
恋愛伴侶規範 (amatonormativity)
一対一の継続的な恋愛関係にもとづく結婚こそが万人にとっての理想であるに違いないという規範のこと。哲学者のエリザベス・ブレイク(Elizabeth Brake)が婚姻制度の問題を説明するために作った造語ですが、現在ではアセクシュアルやアロマンティックの人々のコミュニティなどでも使われています。
人間性愛規範 (humanonormativity)
他の人間と性的実践や恋愛関係をもつのが「望ましい」「あるべき」セクシュアリティだとする規範のこと。社会言語学者のハイコ・モッチェンバッハー(Heiko Motschenbacher)が、対物性愛の研究から提起した造語です。
異性愛規範 (heteronormativity)
異性へ性的に惹かれることを「望ましい」「あるべき」セクシュアリティだとする規範のこと。似た用語として「強制的異性愛(compulsory heterosexuality)」などもあります。
用語についての注意点
上に挙げたラベルは、自分が何者であるかを説明するためのツールであり、また自分自身を理解するためのツールです。どれに当てはまるかを第三者が「診断」するものではありませんし、定義に当てはまっているからといってそのラベルを名乗らなければならないという義務もありません。
自分にとってしっくりくるラベルかどうか、自分のあり方をどのように説明したいか、そういったことに応じて、どのラベルを使うか(あるいは使わないか)を決めればよいでしょう。また言葉は時代とともに変わっていきますので、上の説明はあくまで暫定的なものとして捉えてください。
「性愛」と「セクシュアル/ロマンティック」について
英語圏ではアセクシュアルやアロマンティックのコミュニティを中心に、性的惹かれと恋愛的惹かれを区別する言葉遣いが広まっています。これに対して「性愛」という日本語は、sexualityの訳語としての用法もありますが、しかし恋愛感情や親密感情を含むニュアンスでも使われがちです。「性愛」という日本語については、このことに留意しておいてください。
もっと知りたい方へ